WINE・WANDERING ワイン彷徨通信
 
 
005「ブラジルワイン・インフォメーション 02」

現在ブラジルでは、高品質の国産ワイン(Vinho Fino)の消費が徐々に増加している。国内では輸入ワインと競合しはじめ、生産者たちは海外市場という新しいチャンネルを確保しようと動き出したばかり。ぶどう畑もどんどん開墾されているところだ。

かつてのブラジルワインは、単純で、ごつごつした、タンニンの強いものだったそうだが、今では、そのようなワインは徐々に姿を消し、タンニンがやわらかで、フルーティで、エレガントなワインが増えている。

ブラジルのワイン醸造所のほとんどすべてが、イタリア系移民(特にベネト地方)の子孫たちの経営。そのため、イタリアとの関係は強く、栽培品種にも、ワイン地方の食習慣にもイタリアの影響が濃く、多くの地名もイタリア名だ。イタリア移民は1884年の時点で、約800万リットルものワインを生産していたそうだが、当時は雨が多く、持ち込んだイタリアの品種がうまく育たなかったため、カビ菌に強いアメリカ品種やハイブリッド品種が主流となった。現在では、多くの醸造所がヴィーティス・ヴィニフェラ種(いわゆるヨーロッパ品種)の栽培に力を入れている。

現在の栽培品種は、赤ではフランス品種(カベルネソーヴィニョン、カベルネフラン、プチ・ヴェルド、メルロー、ピノノワール、ガメイ、シラーなど)をはじめ、イタリア品種(サンジョヴェーゼ、ネッビオーロ、モンテプルチャーノ、アンセロッタ、テロルデゴなど)、ポルトガル品種(トゥーリガ・ナシオナル、ティンタ・ロリス(テンプラニーリョのこと)、トリンカデイラ)が中心。チリで評価の高いカルメネール、ウルグアイで成功しているタナ、アルゼンチンを代表する品種となっているマルベックも栽培されている。

白は、フランス品種(シャルドネ、シュナンブラン、セミヨン、ソーヴィニヨンブラン、ヴィオニエ、ピノ・グリ)、イタリア品種(モスカート・ビアンコ、モスカート・ジアロ、モスカート・カネリ、プロセッコ、リースリング・イタリコ(ヴェルシュリースリングのこと)トレッビアーノ(ユニ・ブランのこと)、マルヴァジア・ビアンカ(マルヴァジア種はスペイン、ポルトガルでも栽培されており、赤品種もある))、そしてドイツ系品種(シルヴァーナー、ゲヴュルツトラミーナ)が中心。

今はちょうど、造り手があらゆる品種に挑戦している実験段階でもあるので、思いがけぬ品種に出会うことも多い。

ブラジルワインで国際的に評価されているのは、赤ワインとエスプマンチ(スパークリングワイン)だ。シャンパーニュ製法のスパークリングワインだけでなく、シャルマ製法のスパークリングワインも高品質。生産量が非常に多いのは、アスティ・スプマンテタイプの甘口のもの。近年人気がでているのはプロセッコである。ブラジルには、フランスのシャンパーニュ地方のような、エスプマンチを中心に生産している地域がある。リオ・グランジ・ド・スル州のガリバルディだ。20世紀初頭から、エスプマンチ生産の中心地として発展し、「エスプマンチの大地」として知られている。

ブラジルワインの何よりの面白さは、土壌、そしてミクロクリマが非常に多様で複雑だということ。そのため、地域によって実にさまざまなタイプのワインができる。これからがとても楽しみなワイン生産国だ。

 
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